私たちが普段口にしている食べ物には、いろいろな栄養素が含まれていますが、そのうち『タンパク質』『糖質』『脂質』の3つは三大栄養素と呼ばれ、私たち人間の生命維持や身体活動などに欠かせないエネルギー源となっています。無理なダイエットや偏食など、食生活の乱れが指摘されているだけに、今一度、この三大栄養素の大切さと役割を再認識してみる必要があるでしょう。
今回は、体のエネルギー源となる炭水化物について、その役割と効能を紹介したいと思います。
炭水化物
炭水化物は単糖から成る化合物です。
炭水化物の多種多様な化合物はさまざまな基準で分類することができ、化学的特徴による分類では、
- 単糖類(ブドウ糖、果糖など)
- 二糖類(ショ糖、乳糖、麦芽糖など)
- 少糖類(マルトオリゴ糖など)
- 多糖類(アミロース、セルロース、ぺクチンなど)
というように分類できます。
また、生理学的分類では、
- ヒトの消化酵素で消化できる易消化性炭水化物(いわゆる糖質)
- 消化できない難消化性炭水化物(いわゆる食物繊維)
というように分類できます。
炭水化物の役割
炭水化物の役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等、通常はブドウ糖しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することです。
栄養学的にみれば、炭水化物の役割は、体のエネルギー源となることといえます。
炭水化物の中でも糖質は、ブドウ糖へ分解される過程でエネルギー源としての役割を果たし、1g当たり4kcalのエネルギーを産出します。
過剰な糖質はブドウ糖へ分解されたときに、グリコーゲンとして肝臓や筋肉で蓄えられ、必要に応じて再びブドウ糖に変化します。
このグリコーゲンとして蓄える量には限界があり、限界を超えた量が体脂肪として蓄えられます。よって糖質の過剰な摂取は肥満につながります。
逆に、糖質が不足すると、エネルギー不足になりやすく疲労感などが現れます。
また、たんぱく質を削ってブドウ糖を体内で作り出すようになります。
一方で食物繊維はあまりエネルギー源とはなりませんが、生活習慣病の改善に役立つ可能性が注目されています。
実際に、食物繊維が心筋梗塞・脳卒中・糖尿病などのリスクを低くするといった研究報告も存在しています。
必要量
炭水化物はある特定の病気のリスクとなる証拠が乏しく、肝臓はエネルギー不足に応じてブドウ糖を生み出すので、絶対量としての炭水化物の摂取量はありません。
よって、炭水化物の必要量は、タンパク質と脂質で得るエネルギーの残余として設定されています。具体的には、必要エネルギー量の50~65%と設定されています。
一日に必要なエネルギーが2400kcalだとしたら炭水化物で得るエネルギー量は最低で1200kcalとなり、1g当たり4 kcalのエネルギーを産出することから、1200/4=300gの炭水化物を摂取すべきとなるわけです。
糖類の必要量
糖類の摂取による健康影響は、糖類の種類によって異なりますが、具体的な影響はまだわかっていません。
よって、それぞれの糖の目標量は設定されていません。
食物繊維の必要量
食物繊維の摂取量が多いためにリスクが増す生活習慣病は報告されていないので、摂取量に上限は設定されていません。
下限については、ある研究では24 g/日以上摂取で、食物繊維摂取量との関連が最も明らかな生活習慣病である心筋梗塞死亡率の低下が観察されているので、理想的にはこの値を下限とすべきです。
しかし、日本人の食物繊維摂取量の中央値は、これよりも少なく、目標を達成できる可能性が低いので、達成しやすい基準が以下のリンクの炭水化物のページに設けられています。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」